前にも述べたが、コルクに蘭を植えると良く育つと取引先の蘭愛好家に聞き、自分で大丸デパートでカトレヤとデンドロビューム各一株を買って育て始めてから凡そ十年になる。 その間着生種か地生種かよく分からない株を含め手当たり次第コルクに植え着けて試して来た。その経験から得た事を基に東京ドーム蘭展でコルク材を販売して来た。然しこれほど売れないというか売るのに手間の掛かる商品は他にはないのではないかと思う。

コルクってなあに?どこで採れるの?から始まって四号鉢二杯分ほどのコルク粒一袋600円を売るのに、「キンギアナムをこのコルク粒で植えると高芽が出なくなり花がよく咲く」という説明を、植え替え時期、植え着け方、その後の管理など延々と喉が嗄れるほど喋らなくてはならない、中には、長々と説明を聞いた挙げ句に「へえ〜そう」なんて言って立ち去るご婦人もいる。

花を売っている蘭園さんは一株1.500円二株2.500円などと言えば説明なしにどんどん売れてしまう。自園で育てた蘭を売る人はともかく、百姓が育てたものを市で仕入れ、右から左へ売って大金(?)を得ている方達がウラメシイ。当方はもはや趣味の世界である。馬鹿々々しいから来年は止めようかなど考えることもあるが、全々見覚えのない奥様から「言われた通りコルクに着けたら花が咲いたの!」などと言われると、奥様が一層美人に見え後光が射して、こちらは涙がぽろぽろ出てしまう。また、「あっちこっちずいぶん探した、これとっても具合良いんだよ、仲々よそに売っていないんだよ」なんて汗を拭き拭きなにがしか買ってくれる人が来てくれるので「仕方がない、骨折り損の草臥れ儲けでも来年も出るか」なんて気になってしまう。出店料と経費を引くと収支とんとんか?「是非コルクタイルを買って下さい」と言った分が儲けかも。


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