第2回


コルクに着けた蘭の育て方(前半)


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カトレヤ カトレヤ オドンドグロッサム
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カタセタムビリータム 風貴蘭 ミリオンシジューム

 極く限られた種を、他の育て方と比較することもせず、ただコルクに着けて試しただけで、それが「よい育て方」などというのは論外でしょう。「育て方」というよりも、寧ろ「コルクに着けた楽しみ方」と言うべきだと思います。以下は、それについての私の考え方と実行経過です。


(1)温度、日照、通風



 カトレヤ類の巻で述べたとおり、日本の自然は大多数の蘭にとって暑過ぎ寒過ぎます。また、木に着生しているということは、その木の葉である程度遮光されているということになります。更に椿の様な常緑樹に着生しているか、柿の木の様な落葉樹に着生しているかによっても夏冬の日照具合が違うのではないでしょうか。こんな事を取り上げると切りがありませんが、何等かの工夫をして、その種の自然生育条件に近着ける必要があり、それがまた蘭を育てる楽しみでもあるでしょう。
 参考として実際に育てている環境を申し上げますと、私の所は比較的樹木の多い東京都南東部で、今年(平成8年)の冬、庭では0℃夏は38℃の日がありました。人工環境としての温室は、換気と高温度になり過ぎるのを防ぐ為の自動開閉天窓、加温は灯油自動点火式で、夜は15℃、昼は25℃に手動で設定しています。室内の隅々まで空気を動かす目的で扇風機3台を常時回しています。
 晩秋から4月末頃までの半年間をこの中で育て、春先からの半年は、庭に足場用鉄パイプで高さ3m弱の枠を組み、それに物干し竿を並べて頭が当たらない高さに吊るしています。遮光は50%寒冷紗。 さて、これで温度と日照の調整は程々に出来ているかと問われると、デパートの蘭展などで即売される一般的な種には一応極端な悪条件は取り除かれていると言えますが、珍奇な花を咲かせるマスデバリアなどを育ててみたいとなると、冷温室をもたなければ殆ど成功の見込みはありません。最近は低温性の種も交配により耐暑性を高めていると言われますが、私の所ではこの種は今まで一株も生き残っていません。(それでも懲りずに毎年幾株か試しています)
 個々の属についての適切な温度と日照については解説書に表などを用いて、例えばカトレヤは最低温度○○度、遮光○○%などと示されていますが、同じ属でも大幅にその度合いが異なるものがあることは前回述べた通りです。一般に美しい花が咲く外来の着生蘭は、春から半年間は南東方向開放の木の枝に吊るし木漏れ日を当て(現実には寒冷紗で遮光)、秋から半年間は、屋内の高いところに吊るし出来るだけ光を当て空気を動かす。それに加えて、種によって加減するのが良いといったのが私の基本的な考え方です。




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